第11章 夜に咲く花
陰間たちを見送った後も、瑞は手際よくおにぎりを作り続ける。
おひつのご飯を全て空にし、
「よし、これで……」
最後の一つのおにぎりを置こうと皿を振り返る。
おにぎりの山に手を伸ばしている黒い塊と目が合った。
腰丈までありそうな長い黒髪。
艶があり美しい長髪は無造作に伸びきって、顔を覆い隠している。
それに加えて、黒引き振袖に、真っ黒な羽織。
「え……?」
その真っ黒な塊は、色が抜けるほど白い手でおにぎりをひとつ引っ掴むと、物凄い速さで逃げていった。
瑞は驚く暇もなく、ただただきょとんとする。