第11章 夜に咲く花
「瑞ちゃん何してるの〜?」
外から帰ってきた紫陽花が台所に顔を出す。
ひょこひょこと嬉しそうに擦り寄り、瑞の手元を覗き込んだ。
「皆さんのお仕事は不規則でしょう? 帰ってきた時に何かすぐに食べられる物があると良いと思いまして」
瑞は夕餉の残りのご飯を握りながら答える。
大きな皿に握り立てのおにぎりを置いた。
紫陽花がぱっと目を輝かせる。
「嬉しい〜! じゃあ今貰ってもいい?」
「もちろんです」
紫陽花はルンルン気分でおにぎりを持ち、美味しそうに頬張る。
「美味しい〜」
「何よりです」
その前を蒲公英が通りがかり、紫陽花同様目をキラキラと輝かせた。
「あ! 主様! おにぎりですね! 蒲公英は主様の握ったおにぎり大好きです!」
「良ければ蒲公英さんもおひとつどうぞ」
「かたじけないです!」
そこにゾロゾロと仕事帰りの陰間たちが通りがかる。
「お。美味そうなもん作ってるな」
「へぇ〜、おにぎり?」
「食べたーい! 瑞一個ちょうだい!」
「……この分だと、かなり沢山握っておかないと帰ってきた方の分が残りませんね」
瑞は言いながら、ぎゅっぎゅっと手を動かした。