第11章 夜に咲く花
「ちょ、ちょっと! ほんとに困るんだけどお! ていうかこんな本、こんな沢山どこにあったの!?」
「良ければ私も手伝いましょうか?」
「だだだだだめです!」
昼顔は悲鳴のように叫んで身体を捻り、瑞が手を伸ばそうとする艶本を抱えあげる。
そして勢い余って、
「ずッ……!」
大量のそれを瑞の前にばらまいた。
表紙が捲れ、頁が開き、とんでもない光景が広がる。
「違うんです、これは! ほんとに! あの二人が!」
昼顔はその場に這いつくばる。
艶本をガサガサと掻き集めながら、
「僕のじゃないんですうううう!」
絶叫を上げた。
「だ……大丈夫ですよ、分かってます……」
瑞は何度も頷く。
何とか昼顔を落ち着け、二人で中庭の落縁に腰を下ろした。
昼顔は中庭の小さな畑を見つめて呟く。
「僕は元々、陰間の仕事よりも畑仕事なんかの方が性に合ってるんですよ」
「ああ。それで畑道具を」
瑞は昼顔の隣に置かれた鋏などの畑道具を見て納得する。
昼顔は笑顔で頷く。
「この畑は昼顔さんが管理されてたんですね」
「か、管理っていうほど大袈裟なものじゃないですけどね、他の人にも手伝ってもらってますし。その、僕が好きだから……こういうの」
瑞も微笑んで頷くも、昼顔は困ったように眉尻を下げた。
立て掛けた備中鍬の持ち手を指先で撫でる。