第11章 夜に咲く花
「お」
桔梗が艶本から顔を上げ、竜胆が手招きをする。
「昼顔昼顔、ちょっとこっち来ぃや」
昼顔が畑道具を隅に置き、二人の元に向かう。
「何?」
不思議そうにする昼顔に向かって、
「ほら。お前はどれが好き?」
艶本を広げて見せた。
目の前で繰り広げられる肌色に、昼顔の金色の瞳が大きく見開かれる。
「わーーッ! こ、こんなの見せられても!」
顔を赤くして艶本を押しのけるも、
「何カマトトぶってんだよ、お前も陰間だろーが」
「せやで、このくらい男として当然の嗜みや」
すぐに二人が押し戻す。
賑やかにやり合っていると、
「何見てるんですか? 楽しそうですね」
ひょこっと現れた瑞が部屋を覗き込んだ。
「おおおおおッ!?」
桔梗は真上に飛び上がり、勢いよく艶本を閉じる。
「いや、ほんとつまんないもんです! なあ!」
「せやせや!」
竜胆も急いで片付け、本を重ねる。
二人で腕を組み、うんうんと笑顔で頷いた。
「な……なんや、なんでこんな焦ってんねん俺ら……」
「わかんねえ……」
「……それじゃそういうことで」
桔梗が腰をあげる。
「昼顔、ちゃんと片付けとかなアカンで」
それに合わせて竜胆も立ち上がり、呆気に取られている昼顔と大量の艶本を二本指でぴしっと指さした。
そのまま立ち去っていく二人に、昼顔は血相を変える。