第11章 夜に咲く花
「この蛸がよお……めちゃくちゃいやらしいよな……」
桔梗がお気に入りの頁を開き、しみじみと呟く。
視線の先には、大蛸に絡みつかれている女性が描かれている。
触手にまとわりつかれ、苦しげな表情を浮かべる女性に感嘆する。
隣の竜胆も頁をめくった。
老人に二人がかりで責められている女性の頁で、小さく唸る。
「桔梗お前ホンマよー分からん趣味してるわあ、やっぱ汚いおっさんに汚されてんのが一番やろ……」
部屋中に艶本が散乱する中で、二人は顔を見合わせた。
「は?」
「はあ?」
「……まあ一番ねえのは陰間の奴だな、仕事思い出して萎えちまう」
桔梗が一冊の艶本を開き、眉根を寄せる。
それには、美少年が男性と交わっている絵が載っていた。
「蓮華さんはむしろそれがええ言うてたで」
「なんで?」
「知らん、自分の若い頃思い出してええんちゃう?」
二人で盛り上がっていると、部屋の前を一人の陰間が通りがかる。
桔梗や竜胆と同年代の彼は、やや癖のある橙色の髪を耳を超える高さに伸ばし、顎には届かない程度で切っている。
細身な身体に藍色の刺し子小袖を着て、手には畑道具を持っていた。