第10章 こどもの事情
撫子はキョロキョロと辺りを見渡し、部屋を後にした。
一階に一人で降りてきた撫子。
「なんだ? 撫子、菖蒲だけじゃなく瑞までいないじゃねえか」
撫子はゆっくりと胡座をかき、腕を組んだ。
「誰もおらんかった」
「はあ?」
「……ぷはあッ!」
撫子が降りて行ったのを見計らい、二人は押し入れから飛び出す。
「あ〜……苦しかったあ……」
菖蒲は肩を弾ませて息をする。
大きくため息をついた。
瑞はひたすらに目を白黒させる。
「ど、どうしたんですか? なんで隠れる必要があったんですか?」
「だから……」
菖蒲が見れば、瑞の顔はほんのりと上気し、服装は乱れている。
襟は大きく開き、帯は緩んでいる。
菖蒲は思わず顔を逸らし、自分のはだけた浴衣を慌てて直す。
「その、色々、取り込んでたから……」
瑞は首を捻り、
「あっ……」
察しのついた顔に変わる。
「分かりました、大丈夫ですよ」
「あと……これは……ごめん、すみません……」
菖蒲は気まずそうな顔で瑞の手ぬぐいを差し出す。
瑞はあっさりと受け取った。