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影の花

第10章 こどもの事情


菖蒲の部屋にて。

菖蒲は呼ばれていることに全く気が付かず、すっぽりと布団に包まっている。

「……日向丸」

そして幸せそうに零した。

瑞の手ぬぐいを顔に押し付け、すんすんと鼻を鳴らす。

目を蕩けさせ、興奮と暑苦しさに顔を火照らせた。

掛け布団の中で身体を丸め、無意識に腰を動かす。

「っ、ふ」

自然と両脚を擦り合わせ、何度も絡めながら、足先をピンと伸ばした。

「……はぁ……っ」

段々と息苦しくなり、小さく布団から顔を出すと、

「……あの?」

不思議そうにこちらを見下ろしている瑞と目が合った。

どうやら瑞はずっと布団の塊の前に立ちすくんでいたようだった。

菖蒲は状況を把握し、顔を更に真っ赤に染める。

瑞は心配そうに眉を下げ、菖蒲の前にしゃがみこむ。

「菖蒲さん、具合が悪いんですか? 大丈夫ですか?」

「やっ……ちょ、違……」

そこで菖蒲の片手に握り締められた手ぬぐいに気が付く。

「あれ、それ私の」
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