第10章 こどもの事情
「ご馳走様でしタ!」
「ご馳走様です」
今日の夕餉もぺろっと平らげていく陰間たち。
しかし、一人分のお膳は手付かずのまま残されていた。
「菖蒲〜! もう片付けちまうぞー!」
萩が二階に向かって声を掛けるも、返事は無い。
面倒臭そうに頭を搔いた。
「何やってんだあいつは。しょうがねえ、様子見てくるか」
「それなら私が行きますよ」
腰をあげる萩を瑞が呼び止める。
その様子に、瑞と菖蒲の距離感を知っていた蘭が口を挟む。
「あらっ、いいわよアタシが呼んでくるから」
瑞はにこっと笑って首を振り、
「良いんです! 少しでも仲良くなりたいですし」
元気よく階段を上がって行った。
「瑞ちゃんってほんと健気ねえ」
「そうだなあ……ああいうとこがうちの面倒臭いガキにも通じるのかもな。好かれてるよな」
萩も頷く。
「あら、ガキだけにかしら」
萩の言葉に蘭は含んだ言い方で返事をし、くすりと笑った。