第9章 大人の事情
瑞は一瞬硬直した後、
「……でもダメです!」
「でもってなんだ」
瑞は身を捩り、叫び、部屋中を逃げ回り、
「う……わーーーーッ!」
勢いよく押し入れに突っ込んだ。
「……そらわしは大工仕事が好きじゃち言うたけどな……大概にせえよ瑞……」
「返す言葉もないです……」
撫子は、力強く蹴破られた押し入れの襖を修繕しながら、眉をしかめた。
瑞は肩を窄める。
「そうじゃのう、昼飯でも奢ってもらうか」
「はい」
「冗談じゃ冗談! 所で牡丹はなんじゃ。なんでずっとおるんじゃ」
二人の様子を見守るように立っている牡丹に首を傾げる。
「おれに責任があるから」
「は?」
「あ、気にしないでください……何でもないです、破ったのは私なので……」
あの後、呆然とする牡丹、押し入れの前で目を回す瑞。
もはや収取の付かない惨状の部屋にまたもや桔梗が駆け付け、
「ほんとに何してんの!? ねえ!」
しっかりとツッコミを入れた。