第9章 大人の事情
瑞も蘭の隣に下半身を浸ける。
「気持ちいいですね、広いお風呂は」
表情と身体を緩め、気持ちよさそうに言う。
「じゃろ? 風呂ちゅうんはなんぼ入ってもええもんじゃ」
牡丹も頷く。
「それにしても……牡丹さんの身体のそれは凄いですね。誰に描いてもらったんですか? なんでお風呂に入っても流れないんですか?」
瑞の言葉に撫子と蘭がズッコケた。
「ほんとに絵っち思うちょる……」
「撫子ちゃんが変なこと吹き込むからよ」
牡丹が瑞に背中を向ける。
「……これは、彫り師にしてもらった。絵じゃない、これは針で刺して、身体に掘ってる」
「えっ」
瑞が驚愕する。
「えええぇ! 痛くないんですか!?」
「痛いよ」
「痛いんですね!」
やり取りを見ていた蘭が溜息をついた。
「牡丹ちゃんったら、ある日いきなり彫ってきちゃったのよ。最近いつも外に出てるって思ってて……気づいたらこれ。確かに彫り物入れた男はいなせに見えるけど、アタシたち陰間よ?」
「わしゃええと思うけどのう。個性的じゃ」
けらけらと笑う撫子を横目で睨み、
「牡丹ちゃんがいくら女相手に変わったからって、陰間は中性的で綺麗な物でしょう? よりによってこんな怖いの入れちゃってぇ」
撫子の背をぺたぺたと触る。