第6章 火遊び
蓮華は背筋をゾクゾクと震わせ、瑞の手の上に自分の手を重ねた。
蓮華の細く長い指が瑞の手に絡みつく。
「……ねえ君、僕を抱いてくれないかな」
「へっ!? へっ、エッ、あ、ああああの……!」
蓮華は艶やかな見た目に似つかわしくない力で瑞の手を握り、身体を寄せる。
「綺麗って言ってくれただろう? 大丈夫、僕は陰間って言ってね、こういうことはお手の物なんだよ」
「それはもう知ってます!」
「ならますます都合がいいじゃないか、ほら、身体を楽にし」
瑞を手篭めにしかねない勢いで詰め寄る蓮華の頭上に、分厚い本が振り下ろされた。
つむじに直角が命中し、蓮華は倒れ込む。
「……だからこれを使ってくれと言っただろう……!」
瑞の視線の先には、肩で息をする睡蓮が立っていた。
「す、睡蓮さん……!」
蓮華がすっくと身体を起こし、頭をさする。
「ふう……頭が痛いな」
「俺の頭の方が痛い」
「上手いこと言って。はいはい、萩のところに行けばいいんだろう?」
素直に服を着て立ち上がり、あまりの衝撃に目を泳がせている瑞に目をやる。
「続きは後でね」
身体を屈め、瑞の頬にちゅっと口付けをした。
「早く行け!」
「怖いなあもう」
睡蓮も怒りで赤い顔で怒鳴りつけ、蓮華を蹴り出すようにし部屋から追い出す。
「……兄がすみませんでした」
「いや……そんな」
お互い本を一冊ずつ抱えたまま、言葉少なに蓮華の部屋を後にした。