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影の花

第42章 大団円へと


翌朝目を覚ました瑞は痛む頭を押さえる。

「いたた……頭が……呑みすぎましたね」

ふらふらと階段を下り、台所に向かう。

水瓶から水を汲み、ぐびぐびと飲んでいる所に萩が通りががる。

「あ、瑞。お前が影の花の新しい旦那に決まったから」

「ああはい……」

瑞は生返事をし、

「……え」

ふと水を飲む手を止める。

「ええ!? ちょっ、どういうことですか!?」

すたすたと立ち去る萩を追いかける。

「どういうことって、今言った通りだよ。前の旦那は名ばかりだったが、それでも店主不在ってのは色々と都合が悪いからな」

「そ、それは分かりますが……」

萩は呆然とする瑞の顔をびしっと指さす。

「だから、瑞が店主だ。以上」

「そこが分からないんですよ! なんで私なんですか!? 私なんて住所不定で、自分のことを何も分からなくて」

卑屈になる瑞に、萩は優しく笑う。

「多かれ少なかれ、ここの連中は似たような者だろ。小さい頃に売られて、ここしか居場所がないんだから。分からないことはこれから俺が教えるしな」

「で、も……私に、そんな大層な役目が務まるかは」

それでも、降ってわいたような大義に迷う瑞。

そこに現れた薊が口を挟んだ。

「満場一致で決まったんだよ、次の主はお前さんがいいって。それなのに文句があんのか?」

瑞はぽかんとし、

「あ、薊さんもですか?」

「……ああ。今そう言っただろうが、満場一致だって。耳付いてんのか」

薊は照れ隠しに睨みを利かせた。

「怒らないで下さいよ……!」

萩は笑って瑞の背をぽんぽんと叩く。
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