第42章 大団円へと
「瑞はそろばんも出来るし、計算も早いからな。おまけに帳簿を付けるのも丁寧だ。見やすく書くのが上手いんだ」
薊は驚いた顔で瑞を見る。
「お、お前そんなことまでしてるのかよ」
「え……ええ、できることはお手伝いしたくて。最近は萩さんのやられている帳簿付けを少しさせて貰っているんです」
「少しどころか、かなりのもんだ。瑞は買い物だなんだと行くせいで顔馴染みも多いし、金払いのいい上客を見つけてくる」
萩は恥ずかしそうにする瑞を見て、遠い目をする。
「第一、あの爺さん何を血迷ったか死ぬ前にお前に後を継がせると言ったんだ」
瑞は全くの初耳で、目をぱちぱちと見開く。
薊は肩を揺らして笑う。
「……一体全体何考えてんだか、死に際にとんでもない大ボケかましたもんだぜ。業突く張りで、面の皮が厚くて、とんでもない冷血漢のスケベじじいが」
「薊、言い過ぎだ」
「言い足りないの間違いだろ。萩はお人好し過ぎるぜ、ほんと」
萩はため息をつき、瑞に向き直る。
「兎に角、やることはほとんど変わらないからあまり気負わなくていい。ただ、お前がここの責任者になるってだけだ。煮るなり焼くなり好きにしたらいいさ」
「それでは、不束者ですが」
瑞はにこっと笑う。
「よろしくお願いします!」
瑞の晴れやかな笑顔は朝日に照らされ、美しく輝いていた。