• テキストサイズ

影の花

第42章 大団円へと


瑞はそこで彼に会っていないことに気がつく。

喧騒を抜け出し、

「蒲公英さん」

廊下に一人佇む蒲公英に声をかけた。

「……大丈夫ですか? 良ければ、二人でお話しましょうか」

瑞が優しく言うと、蒲公英は小さく頷く。

二人で瑞の部屋、元主の部屋に入る。

「まだ、動揺されていますか」

月明かりの下、瑞は静かに訊ねる。

蒲公英は今回の件の中心人物で、あまりにも色々なことがありすぎた。

瑞はまだ幼い蒲公英の胸中が心配で、自然と眉が下がる。

蒲公英は少し考え、口を開いた。

「いえ。蒲公英の主様は主様だけですから。前の主の死に動揺することなど、有り得ません」

しっかりとした口調で言い、瑞に頭を下げた。

「主様……ありがとうございました。蒲公英は、主様と出会わなければ情けなくもさめざめと泣き暮らし、己を呪い、他人を羨み、生き恥を晒していたことでしょう」

「……そんな、私の力など本当に微々たるものですよ……」

瑞が照れ臭そうにこぼしていると、蒲公英はキリッとした表情で見上げた。

「でも、今度こそまぐわっていただきますからね。前の主様が亡くなった以上、もう拒む理由はないでしょう」

「えっ、あ、は……はいっ!」

瑞が反射的に返事をすると、蒲公英は目元を優しく緩めて笑う。

「それでは、下に戻りましょうか。蒲公英たちには主様がいないとダメですから」

瑞は頷き、蒲公英とそっと手を繋いだ。

「瑞、どこ行ってたの〜?」

「あ〜、蒲公英くんと二人っきりだったのかい?」

楽しい宴は夜通し続いた。
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp