第6章 火遊び
瑞は皆に手を振って見送られ、ぽてぽてと廊下を歩く。
「蓮華さん……どんな人なんでしょう? そんなに怖い人なんでしょうか」
小さく独り言ち、教えられた部屋の前で立ち止まる。
「こんにちは、蓮華さん。いらっしゃいますか? 下働きの瑞と言います、萩さんがお呼びです」
声を掛けるも、返事はない。
「蓮華さん? 失礼します」
部屋の中を確認しよう、と障子を開く。
「ン……」
室内にいた青年が瑞に気が付く。
畳の上に脱ぎ捨てられた白い羽織、水色の小袖、そして紅色の褌。
部屋の真ん中に、一糸まとわぬ姿で横座りしている青年。
慌てる様子もなく振り返り、瑞に流し目を送った。
空色の瞳、目尻を彩る睫毛。
鼻筋の通った鼻、薄く色付いた唇。
艶のある桜色の髪を高い位置でひとつに結び、綺麗な項を色っぽく見せていた。
すらりと伸びた長い手足、白い肌。
瑞は全裸の青年と、その近くに転がる男性器を模した張形に気が付き硬直する。
「……何か用? ちょっと気が付かなくてごめんね、取り込んでたから……」
青年はそう言い、張形を指先で撫でた。