第1章 贈り物は拾い物
「ふーん……」
それは萩もまた同様で、可哀想にな、と胸の中で手を合わせるものの、すぐに青年から桜へと視線を戻した。
「それで、桜。今日買う物は決まったかい? あのケチな旦那がお前の頑張りを認めて褒美くれるって言うんだから、何でも言いな。必ず買ってやれって言付かってんだよ」
桜は、萩と反対に未だ青年の方を見続けていた。
「決まったよ」
「お! なんだ、新しい振袖か? 羽織か……?」
そしてこくりと頷き、
「あの人が欲しいな」
綺麗な指先で渦中の青年を指した。
萩は目を見開き素っ頓狂な声で叫ぶ。
「馬鹿言え!」
桜は萩の返答にぷくっと頬を膨らませ、そっぽを向いた。
「じゃあもうなんにも要らない。……明日からお客様も取らない」
「何言ってんだ桜、冗談だろ? アイツとお前に何の関係があるんだよ、それになんでそれが仕事しないことに繋がるんだあ……」
泣き声を上げる萩。
桜はツンとした表情のまま、つらつらと捲し立てる。
「お井戸が悪いって言えば良いからね、いくら守銭奴の旦那様でも商売道具が壊れるのは困るから。暫く休ませてくれるよ。ああでも旦那様怒るだろうね、萩さんが何も欲しい物を買ってくれなくて、稼ぎ頭が明日から休みが欲しいなんて言い出して。きっと皆に当たるよ」
桜の口ぶりから本気度が窺え、萩の顔色はますます悪くなる。