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影の花

第42章 大団円へと


瑞と萩が遅れて玄関を通ると、陰間たちは座敷に全員集合していた。

所狭しと並べられた箱膳には大量の酒や肴が乗っている。

台所からは良い匂いと湯気が立ち上っている。

桜は包丁を持ちながら、ふふっと嬉しそうにはにかむ。

「料理なんて作るの久しぶり」

「さ、桜さんは忙しいですからね……」

梅も控えめに笑って頷く。

「ほらほら、煮物ができたから持って行ってちょうだい!」

蘭は出来上がった料理を紫陽花と藤に手際良く渡す。

「は〜い」

「蘭さん似合うね、お母さんみたいだ」

「何ですって!?」

蘭がおたまを振りあげれば、紫陽花と藤はケラケラと笑って逃げ出す。

「今日はとことん呑もうぜ〜!」

桔梗が酒の入った徳利を掲げ、元気よく叫ぶ。

「うー!」

楽しそうな皆の顔に、桃は嬉しそうに声を上げた。

その姿に目を丸くする椿。

「桃にいもいていいの!?」

驚いて訊ねれば、薊は酒を片手に薄く笑う。

「たりめえだろ、もうあの禿げはいねえからなあ。躑躅良かったなあ、これから毎日堂々と桃と過ごせるぜ……」

隣の躑躅に目をやれば、

「ってもう泣いてんのかよ!?」

料理に箸もつけず、酒も飲まずに号泣していた。

楽しげな桃の声が聞こえる度、肩を跳ねさせる。

「うっ、うう……! 桃、桃にやっと日の目を見せられました……! あ、あんな場所でずっと、桃おおお……」

それを見つけた百合がふらりと立ち寄ると、徳利を掴む。

「つつじーもとりあえず飲も飲も〜、こんなとこで泣いてんの超陰気臭いよ〜」

躑躅の口に勢いよく突っ込み、斜め上に持ち上げた。

「むぐぐぐ!?」

「あは〜、イッキイッキ〜」

躑躅は生真面目に口に流れ込む酒を飲み干していく。
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