第41章 青天の霹靂
その日の夜。
瑞は元々影の花の主人が使用していた自室を離れ、夕顔の部屋に布団を敷いていた。
寝間着姿の瑞に口を尖らせる夕顔。
自分の布団の隣に敷かれる布団に、夕顔は眉を寄せた。
「なんでオレの部屋なんだよ」
「別にいいじゃないですか。それじゃあ、おやすみなさい」
瑞はもぞもぞと布団に入り込む。
「あーはいはい、おやすみ」
瑞は横になり、夕顔をじっと見つめる。
「何だよ」
「……今日は変なことしないでくださいね」
「しっ、しねーよ!」
夕顔は行灯の火を消し、自分も布団に潜る。
しばらくして、夕顔は隣の布団から瑞が抜け出す気配を感じる。
厠にしては長すぎる時間が流れても、夕顔は黙って布団にくるまっていた。
瑞は摺り足で廊下を進み、自室の前に立つ。
障子の向こうからは行灯の光と、話し声が漏れていた。
「蒲公英……お前は本当に可愛いな」
主人は嗄れた声で呼び、痩せて黒ずんだ手で蒲公英の腰を撫でる。
蒲公英は主人の膝の上に座り、恭しく頭を下げた。
「ありがとうございます」
真っ直ぐな黒髪を触り、主人は嬉しそうに目を細める。
「今日は、お前の可愛い声で主様と呼んでくれんのか」
「それ……は……」
蒲公英が顔を背ける。
主人の手が身体を這い回り、不快感に身体を震わせる。
「照れなくてもいいんだぞ」
「あ、ああ……ありがとうございます……」
「今日はちゃんと準備はして来たか? んん?」
「は、い……」