第41章 青天の霹靂
「当然、店の旦那が仕込みをすることもある。うちの旦那のやってるのは、自分のお気に入りの奴をつまみ食いしてるだけだけどな。ただぶち込みたいだけだ。だから一番大切な下準備を面倒臭がるし、好みじゃない陰間には手を出さない」
瑞は返す言葉もなく、視線を下に落とす。
一度だけ会った男の冷たい目や乱暴な物言いを思い返し、身体が寒くなるようだった。
出会った陰間たちの顔が頭に浮かぶ。
彼らの中には身体や心に傷を負った者も多かった。
一見そうは見えない者も、きっとそうではないのだろう。
瑞は静かに拳を握った。
「確かに旦那は蒲公英をえらく気にしてたが……そうか、蒲公英がそう言ったってことは、もうそろそろ喰う気なのか」
瑞の目頭が熱くなる。
「私は、どうしたらいいんでしょうか……」
弱気な言葉が零れ、涙が落ちた。
「皆さんの力になりたいんです……それなのに、何も出来ないのが悔しくて……私、皆さんに貰うだけですっ……」
萩はそんな瑞を見つめ、小さく口を開いた。
「俺は、瑞が生きてくれるだけで。もう充分過ぎるくらい、色んなものを与えて貰ったよ」