第41章 青天の霹靂
瑞が何も決められなくても日は流れ、月はどんどん膨らんでいく。
明日の夜空には見事な丸い月が浮かんでいる事だろう。
影の花の店主には、売り物の陰間には手を出さないよう固く言いつけられている。
その上、蒲公英の話を聞くからにして、蒲公英の初夜は店主の物だと決められている。
店主に仕える身分でありながら命に背き、懇意の陰間の初めてを奪う。
瑞は思い悩んだ末、夜遅く萩の元を訪れていた。
「萩さん……折り入って相談があります」
「おう。俺で良かったら話を聞くぞ」
瑞から話を聞いた萩は難しい顔でため息をついた。
「……なるほどな。蒲公英がそんなことを言ったのか。大変だな、色男は」
萩に流し目で見られ、瑞はかっと頬を赤くする。
「や、やめてくださいよ」
「ま、冗談は置いといて。蒲公英は旦那のお気に入りだからな。水揚げの前に自分で初めてを頂くっつう算段だろうな」
瑞の表情が陰る。
彼らの背負う痛い現実をまざまざと見せ付けられるようで、心苦しかった。
「……陰間になるまでは色々と面倒でな。男は女と違って、ハナから男を受け入れれるようには出来てねえだろ? 女だったら多少の無茶は効くかもしれねえが、男で同じことをやったらすぐに駄目になっちまう。だからしんべこが本番で怪我しないように身体を慣らしてやったり、流れを教えてやったり、準備が必要なんだ。そういう仕込みは俺たちまわしや年上の陰間がやることがほとんどで、信頼出来る客なんかに任せることもあるんだが……。その中で、本番に備えて実際にまぐわうこともある」
「はい……」