第40章 傷口に塩
「何しよんじゃお前ら……」
「起きましたね」
「おはようございます、撫子さん」
瑞が頭を下げれば、撫子は大きく伸びをしながらおうと言う。
ぐぐっと腕を上にやれば、袖口からがしっと筋肉のついた腕が覗き、また新たな傷が散見される。
「撫子さん、また傷が増えましたね……」
「おう! 傷は男の勲章じゃ」
梅に言われると、撫子は至って明るく笑う。
梅はそれを見かねたように瑞に目をやった。
「そう言えば……瑞さん傷薬持っていませんでしたか?」
「ガマの油ですか?」
「それです! 撫子さん、瑞さんに塗ってもらえばいいじゃないですか。すごくよく効くらしいです……!」
撫子は少し考え、ふいと視線を逸らした。
「……嫌じゃ」
「あ」
瑞はそこで蓮華に傷跡を触られて悶絶していた撫子の姿を思い返す。
「そうですね。よろしければ薬をお渡しするので、ご自分で塗られるのはどうでしょう。私持ってきますよ」
にこりと微笑み腰をあげれば、撫子も立ち上がる。
「瑞さんが持ってきてくれるのなら、撫子さんは着いていかなくても……」
「なんじゃ、梅が塗ってくれるんか?」
撫子がぐいっと梅に顔を寄せ、胸元を見せつければ慌てて後ずさる。
「いいいいです!」
撫子はケラケラと笑い、瑞と歩き出した。