第39章 枯葉
夢か現かすら定かじゃなくなった頃。
躑躅の認識する世界から蓮華の存在は掻き消え、目の前には朧気な瑞の姿が浮き上がっていた。
「あッ……あぁ……瑞、さん……」
躑躅はふらふらと蓮華に抱きつこうとするも、躊躇って手を引っ込める。
「皆さんの所へ行かなくて、良いのですか……きっと、わたくし以外の人が、貴方を待っています……」
麻の葉の煮汁によって、意識は完全に別世界へ飛んでいながらも、弱気な言葉を漏らす。
蓮華はくすりと一笑した。
「君は前々から気丈な反面、失敗を恐れる脆さや弱みを見せられないきらいがあると思っていたけれど、まさかそこまでだったとはね。皆に気後れして声も掛けられない訳だ」
「う……?」
躑躅のくらくらとする頭では理解が追いつかず、不思議そうにする。
蓮華は幼子のように首を傾げる彼に笑いかけ、優しく抱きしめた。
「ふふ。今の私は君だけの物ですよ、なんてね」
「ああぁ……嬉しい……」
場所は変わって、瑞は躑躅から借りた本を手に影の花内を歩き回っていた。
薊と談笑する萩を見つけ、声をかける。
「すみません、躑躅さんを見かけませんでしたか? お部屋にいらっしゃらなかったのですが、お仕事でしょうか」
「いや、この時間は仕事は入ってないはずだが」
「躑躅なら蓮華の野郎と一緒にいたぜ」
薊の答えに頷き、瑞はぺこりと頭を下げる。
「ありがとうございます。それでは蓮華さんの部屋に行ってみますね」
蓮華の部屋の前で立ち止まり、声をかけた。