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影の花

第39章 枯葉


「……やあ。きっと来ると思っていたよ」

その日の夜更け過ぎ、躑躅は神妙な顔で蓮華の前に立っていた。

「瑞さんは……いらっしゃらないのですね」

躑躅は顔を左右し、ここが蓮華一人だけの空間である事を理解する。

「ああ。僕が君に与えられるのは難しい現実じゃなくて、幸せな夢さ」

蓮華はそう言って笑うと、躑躅に湯呑みを差し出す。

「これは……?」

躑躅はそれを受け取り、訝しげにする。

中には何か植物を煮出した汁が入っているのか、青臭い臭いがしていた。

「夢への招待券さ。一気に飲むといいよ」

蓮華は何の汁なのかは明言せず、曖昧に誤魔化して、また笑う。

躑躅はきっとこれがろくでもない物だと知りながら、

「ン……」

湯のみの中の液体を飲み干した。

蓮華はニコニコと躑躅の様子を見守る。

「段々良くなってくるからね」

「う……」

蓮華の言葉通り、躑躅の頭は少しづつ重たく濁り始め、上手く回らない。

視界が眩み、妙な高揚感に堕ちていく。
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