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影の花

第39章 枯葉


つかの間の幸せに浸っていると、

「瑞〜!」

隣の部屋から大きな声で瑞が呼ばれた。

「うー! いっいい! きっ!」

嬉しそうな声と、どんどんと壁を叩く音。

瑞は苦笑する。

「桃さんですね」

「ええ。こちらの声が聞こえたのでしょう。桃の元へ行きましょうかね」

躑躅はそう言うと、腰を上げる。

「しかし……」

手にした本と隣室を見比べて迷う瑞。

躑躅は微笑み、瑞の手に自分の手を重ねる。

そうして、開かれていた本をぱたりと閉じた。

「瑞さん、ありがとうございました。是非また続きをお聞かせ頂きたいものです」

瑞も少し寂しそうに微笑む。

「……はい、いつでも読みますよ」

躑躅の後に続き、桃の部屋に向かった。
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