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影の花

第39章 枯葉


「面白そー! 躑躅さん、次おれにも貸してっ!」

「桔梗お前活字読まれへんやろ」

「読めるわ!」

「躑躅にい、ボクも読みたーい!」

「俺もちいと興味あんなあ」

「ま、待ってください、まだ私が読んでませんからッ!」

あっという間に陰間たちに取り囲まれ、揉みくちゃにされる瑞。

躑躅は黙って佇んでいたものの、

「……では、わたくしはこれで。失礼致しますね」

すっと踵を返す。

「あ……躑躅さん、本当にありがとうござ、ちょっとお! 誰か今どさくさに紛れて……ッあ! 変なところ触らないでくださいよ!」

騒がしい部屋を後にする躑躅に蓮華も付き添う。

会話もなく、淡々と歩く躑躅。

重い空気の中、蓮華が口火を切った。

「躑躅くんはあれでいいのかい? 内気な君の努力が、積極的な獣たちに食い物にされてしまったようだけど」

「何が言いたいのです」

「たまたま見つけた、なんて嘘だろう?」

蓮華は躑躅の包帯にそっと触れる。

躑躅はぴくと爪先に力を込めるも、身体を動かすことが出来ない。

蓮華は密やかな笑みを浮かべ、包帯の上をなぞった。

「君はもう一人では本を読めないだろう? 当然表紙で何の本を判別するかは不可能だ」
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