第39章 枯葉
暫く探し歩いていると、賑やかな話し声が漏れ出る部屋から、瑞の声がする。
躑躅と蓮華は足を止めた。
「あ……」
躑躅は、大勢の話し声や笑い声が重なり合う部屋に入るのを尻込みするように俯く。
蓮華は優しく声をかけると、
「瑞くんいるかな。失礼するよ」
躊躇する躑躅を他所に、障子を開いた。
陰間たちが振り返り、その中心にいた瑞が二人を見る。
ニコッと笑って、嬉しそうに腰を上げる。
「あ、蓮華さん、と躑躅さん。珍しい組み合わせですね」
「いやいや。躑躅くんが君に用事だそうだよ」
「私に? 躑躅さん、どうされましたか」
躑躅は自分に向けられた瑞の声に肩を跳ねさせ、おずおずと本を差し出す。
「……あの……この本、以前に読みたいと言われていたでしょう?」
瑞の目がぱっと輝く。
「わあ! 探してきてくれたんですか?」
躑躅は瑞の嬉しそうな声に表情を緩めつつ、冷静に言う。
「いえ、たまたま見つけたので。宜しければどうぞ」
「嬉しいです! 躑躅さん、ありがとうございます!」
躑躅は盲目の瞳で瑞を見つめ、遠慮がちに口を開ける。
「いえいえ……そんなに面白い本なのであれば、読み終えた後にわたくしに感想など……教……」
小さな声で途切れ途切れに言葉を紡いでいると、途中で瑞の手にした本を桔梗が覗き込んだ。