第39章 枯葉
「おや躑躅くん。最近の君はいつになく活動的だね、よく顔を見せてくれて嬉しいよ。君の稀有な美しさはいつ見ても僕らをはっとさせてくれるね。まさに咲き誇る純白の躑躅のようだ」
廊下を通る躑躅を目にした蓮華。
にこにこと笑いかけ、滑らかに台詞を吐く。
躑躅は妙に明るくも落ち着いた声色と調子の良い言葉で蓮華と判断し、口元を歪めた。
「……汚らわしい人」
ボソリと吐き捨てられた言葉に、蓮華は苦笑いする。
「そ、それは僕に言っているのかな」
「ええ。貴方は性的欲求を隠しもせず、あろう事かその汚らわしい獣欲を後輩で発散しているとお聞きしております」
躑躅が言い切ると、蓮華は頭を搔く。
「酷いな……僕は先輩や同僚にもいくよ、年齢は関係ないからね」
頭頂部で結ばれた長い髪を揺らしながら答える。
躑躅は蓮華から真顔で背を向けた。
「話はそれだけならもう行きます」
「待って待って! 誰か探しているのかい?」
「……ええ。瑞さんが読みたいと言っていた本をたまたま見つけたので、貸して差し上げようかと」
躑躅は手にしていた本を指先でそっと撫でる。
蓮華はそんな躑躅を見つめ、
「たまたま……ね」
意味ありげに呟いた。
躑躅は敏感にそれを察知し、声に不快感を表す。
「……なんです? 何か言いたそうですね」
「いや、僕も瑞くんを探すのをお手伝いするよ。君が一人で瑞くんを探すのは骨が折れるだろう」
「わたくしは一人で構いませんが」
「同期のよしみじゃないか。遠慮しなくていいんだよ!」
「しておりません」
躑躅に煙たがられながらも、蓮華はニコニコと笑って彼の一歩後ろを歩く。
「手を持とうか」
「結構です」