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影の花

第38章 飽和


「あ」

二人は小さく身体を震わせる瑞を見下ろす。

「そんなに気持ちよかった? 可愛いねっ」

「僕はまだいっていいなんて言ってないんだけどな」

桜が目隠しを取り、藤が猿轡を外す。

瑞の目は涙で潤み、手ぬぐいは涎で濡れていた。

慌てて手足を縛る帯を解く。

「は……ぁ」

瑞は身体の端をピクピクと揺らし、

「何でも好きにしてくれて構いませんが、無視しないで下さい……」

涙声を漏らした。

瑞は裸で座り込むと、膝に顔を埋める。

小刻みに双肩を揺らす姿に、二人はぴたっと止まる。

恐る恐る様子を伺う。

「瑞、泣いてるの?」

「……大丈夫?」

瑞は無言で俯いたまま、顔を上げようとしない。

桜は顔を赤らめ、身体を捻る。

「どうしよ〜、ボク少し藤くんの気持ちが分かったかも……」

「奇遇だね、僕は桜の気持ちが分かったよ。……瑞さん、ごめんね! 僕が悪かったよ!」
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