第38章 飽和
瑞が一瞬逡巡した、その隙をついて藤が瑞の腕を取る。
「ふ、藤さん?」
藤はゆっくりと手を絡め、余裕ありげな微笑を浮かべて瑞を見上げた。
「瑞さん、あなたが皆を拒まなかったのは、行き場がないだけだからじゃなくて……皆に欲望のままに愛されて、思いの丈をぶつけられて、本当はゾクゾクしていたんだろう?」
藤は艶っぽい表情を浮かべ、綺麗な目元で蠱惑的に笑う。
しっとりと言い、
「僕には分かるよ」
黙り込む瑞の前で帯に手をかけた。
しゅるりと帯を解けば、藤の色白な素肌が顕になる。
すっきりした細い鎖骨、括れた腹の中心の小さな窪み。
瑞は思わず目を隠す。
「ふふふ藤さん……!?」
藤は満足げにし、片手に掴んだ帯を瑞の背に回した。
「だから、縛ってあげるね」
「へ……?」
ギョッとする瑞と目が合えば、藤は柔らかく笑う。
目にも留まらぬ速さで瑞の両手首を後ろ手に縛りあげ、両膝を折らせる。
余った帯を伸ばして足首と結び、
「ふむッ……!?」
口にぎゅっと手ぬぐいを噛ませる。
仕上げにハチマキで両目を覆い、完全に身動きの取れなくなった瑞を畳の上に転がした。