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影の花

第38章 飽和


「この前ね、瑞が顔を真っ赤にしお風呂場から出てくるとこを見ちゃったの」

桜が頬を染めて言えば、

「ふふ。僕は廊下で百合さんに詰め寄られいる場面を見たよ」

藤は笑みを交えて言う。

「その後からしんべこのみんなが出てきて〜……あれは絶対に何かあったんだと思うんだよねっ!」

「話し終わったあと、二人で百合さんの部屋に入って行ってたね。明らかにこれから何かある感じだったよ」

「……可愛い〜!」

二人で声を揃えた。

「ボクたちにバレてないと思ってるのが可愛いよねえ!」

「必死に隠そうとしている所が可愛いね。イジった時の反応が堪らないな」

二人は語り合ってはきゃっきゃっとはしゃぎ、

「甘やかしたくなるねっ!」

「虐めたくなるね」

顔を見合せた。

「え!?」

「ん!?」

桜は首を横に振り、藤をじとっとした目で見る。

「ごめん、こればっかりは藤くんが何を言ってるかサッパリ分かんない……ひたむきに頑張っている瑞をよしよしってして、デロデロに甘やかしたいでしょおっ!」

徐々に声を大きくし、力強く言い切る。

藤はわざとらしく溜息をつき、半笑いで零す。

「……それはこっちのセリフかな。純粋で健気な瑞さんだからこそ虐めたくなるのさ。誰でもいい訳じゃないよ。ふふ、瑞さんっていい声で鳴きそうじゃない?」
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