第6章 火遊び
顔を赤くする桜の肩の上にぽんと大きな手が乗る。
「何喧嘩してんだ。桜、行くぞ」
萩に促され、桜は渋々網傘を被り、出る準備をする。
「はーい……竜胆くん、瑞に変なこと教えないでよね。瑞はそこが可愛いんだから」
竜胆をひと睨みした後、両手に頬を添える。
「それじゃ瑞いってくるねっ」
「はい。行ってらっしゃい」
「竜胆くん、絶対だからね!」
「はいはい」
萩と桜が見えなくなるのを確認し、
「……さて、と。兄やん行くで、掃除は後回しや!」
竜胆はぽいっと雑巾を投げる。
瑞の手を掴んだ。
「え?」
「気ぃ変わったわ、あないな事言われたら俺もう兄やんにちょっかい出しとうてたまらへん!」
竜胆は大袈裟な身振り手振りをし、表情をコロコロと変え、最後ににっと笑う。
「タダでええわ、兄やんにしっかり変な事……いやええ事教えたるからな」
「お手柔らかにお願いします」
「ほな行くで〜!」
くるっと踵を返し、茶屋の中に入る。
瑞の手を取り竜胆が上機嫌に歩いていると、
「……何やってんだ? 竜胆」
偶然通りかかった桔梗が訝しげに二人を見る。