第37章 天上天下唯我独尊
「睡蓮さーン!」
元気いっぱいの声に呼ばれた睡蓮、瑞は慌ててそちらに顔を向ける。
そこには自分と揃いの狐面を手にした菊が立ち竦んでいた。
「睡蓮さん用のお面を持ってきたから、ちゃんと見えるかどうか体感してみ……」
「き……菊、これはだな……」
睡蓮が言い淀んでいると、菊はくるっと背中を向ける。
「みんナ〜! 睡蓮さんが瑞さんにやらしいことしてるヨ〜!」
大きな声で言いながら走り出した。
「待てッ!」
睡蓮は大慌てで菊を追いかけ、ガシッと首根っこを掴む。
「なにを……言うんだ貴様は……」
「違うノ?」
「違う!」
菊は残念そうに肩を落とす。
「そっカ……それもそうだよね、睡蓮さんは不能だかラ……」
「誰が言ったんだそんなこと!」
睡蓮は声を荒らげる。
ぽかんとする瑞の前で、二人は激しく争う。
「お風呂に入っても絶対に股間の手ぬぐいを取らないっテ」
「それが何なんだ! それとこれと何の関係があるんだ!」
「春画も艶本も一冊も持ってないっテ」
「僕は小説派だ!」
「そういう話をしてても全く食い付いて来ないっテ」
「大っぴらにするような事じゃないだろう……!」
「そもそもチンチンがないっテ」
「そんな訳が無いだろう!?」