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影の花

第37章 天上天下唯我独尊


「仲良しですね」

そこに通りがかった瑞はくすりと笑う。

「ア! 瑞さン!」

菊は声を明るくし、ぴょんと立ち上がる。

瑞は睡蓮たちに手を振り、優しく顔を傾けた。

「一緒に竹とんぼしよウ!」

「はいはい」

睡蓮は目を細め、二人が遊ぶ様を微笑ましそうに眺めていた。

それからして。

瑞は座敷に一人佇み、窓辺で本を読む睡蓮を見つける。

「睡蓮さん」

声を掛けると、睡蓮は瑞を見上げる。

本を閉じ、微笑んだ。

「ああ、瑞さん。今日はすまなかったな、菊の面倒を見てもらって」

「いえいえ、私も楽しかったです。睡蓮さんは菊さんと仲が良いんですね」

「ああ、弟というものがいればああいうものなのかと考えたりな。なかなか可愛い」

睡蓮は優しげな顔で言い、苦みばしった顔に変える。

「僕にはおかしな兄しかいないからな。まあその分思い出は沢山あるが……」

そこまで言ったところで、口を噤む。

にこにこと耳を傾ける瑞に頭を下げた。

「すまない。無神経な発言だった」

「いえいえ! 気にしないでください。むしろ私、昔の思い出が無い分皆さんのお話を聞くのが好きなんです」
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