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影の花

第36章 物々交換


「兄やんそんなん絶対あかんて! 実際菫くんがそれで性に目覚めてるやん!」

「そっそれとこれとは……少なくとも竜胆さんが想像してるようなことはありませんから! 今は……」

瑞は視線を逸らしながら、尻すぼみにボソボソと言葉を吐く。

「ま、まあええわ。とにかく菫くんは瑞兄やんで興奮するっちゅうこったな」

「はい……」

「兄やん協力してやりいや、菫くん真剣に悩んでんねん」

竜胆に肩を組まれ、瑞は顔をしかめる。

「え、ええ〜……そんなこと言われても、どうしたらいいんですか」

「菫くんどないしたらええ? 瑞お兄さんが手伝うてくれるらしいで」

「ま、まだやるとは」

「……じゃあ……また裸を見たいです……」

菫は気弱そうな目を潤ませて瑞を見る。

瑞はうっと言葉に詰まった。

虫が好きで、穏やかで、他のしんべこ達よりもずっと控えめな彼のお願い。

湯冷めしそうだな、なんて考え、自分の絆されやすさに呆れながらも帯に手を掛けた。

しゅるりと解き、浴衣の前を開く。

まだほんのりと火照った上半身と褌を身につけた下半身を晒す。

「……こんな感じ、ですか」

頬染めながら、俯きがちに二人に視線を投げた。
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