第36章 物々交換
瑞は竜胆の部屋に入り、この状況に至るまでの説明を聞く。
「……っちゅー訳や。陰間の先輩として、しんべこが困ってたら相談に乗るのは当然やろ?」
「はぁ……」
瑞は曖昧な返事をし、竜胆の顔と春画を見比べる。
「それでどや、菫くん。気になる人もおらへんか? 近所のお姉さんとか、新妻とか、花魁とか色々おるけど」
菫は顔を赤らめ、もじもじと視線を上げる。
「男の人はダメですか……?」
「もちろんええで! ちょっと待ってや、衆道モノでなんかええのあるかいな〜っと」
「あ……せ、折角僕のために用意してくれたのに申し訳ないんですけど……」
「ん?」
菫はちらりと瑞を見る。
竜胆はははあと口角を上げ、
「……兄やん、ご指名や」
「え?」
瑞の肩を叩いた。
「可愛い菫くんの為におかずになってやりい」
「ええええっ!?」
菫は頬を紅潮させ、上目に瑞を見る。
「僕……あの時からなんです。イモリ捕りにみんなで行った日の帰り、銭湯に行きましたよね……」
「え、ええ」
「そこで初めて瑞さんの裸を見て……ぼく……初めて、おちんちんが大きくなって、だから……」
瑞は菫の告白にいたたまれないような気持ちになりつつ、顔を赤くする。
「菫さん……じゃあ、たまに一緒にお風呂に入っていた時も……」
「なんやてえ!?」
仰天する竜胆に瑞は目を見張る。
「な、なんで竜胆さんがそんなに驚くんですか。しんべこの皆さんとはちょくちょく一緒にお風呂に入ってますよ」
「そ……それで、何すんねん」
「何って……皆さんの髪を洗ってあげたり、身体を拭いてあげたり、色々ですよ」
竜胆の脳内に半裸でしんべこ達と戯れる瑞の姿が浮かぶ。
ぶっと噴き出した。
「わあ!?」
驚きの声を上げる瑞の手を掴む。