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影の花

第36章 物々交換


「ま、まあ俺は何回も見てるし、流石に菫くんの前ではな」

「ぼくが見てると大きくならないんです?」

「ここは案外繊細やから、そーいうので勃たへんかったりするんや」

菫は頷き、自分の下腹部を見下ろす。

何の変化もないそこに残念そうにし、

「じゃあぼくのも緊張してるから出ないんでしょうか……」

「それはそーいう訳とはまたちゃうと思うけど」

竜胆は笑って菫の背を叩く。

「うーん、勃たへんとなると教えようにも教えられへんな。まあ焦らんでええと思うで、人それぞれやんけ!」

「竜胆さん、銭湯に行った帰りにガマの油という物を買ってきたんですが! たちどころに傷が塞がるんですよ! 凄いですよ……ね……」

瑞は湯上りと興奮から上気した顔で、無邪気に障子を開いた。

「あ……」

「へ……」

飛び込んで来た光景にみるみる顔を赤くし、障子を閉めようとする。

「お取り込み中でしたねッ、ごめんなさい!」

「ちゃうってえ!」

竜胆は急いで瑞に追い縋る。

菫は二人を見上げ、瑞の袖を引いた。

「瑞お兄さん、実は竜胆お兄さんのおちんちんが勃たないんです」

「えっ」

「ちゃうちゃうちゃう! 菫くん何言うてんのお!?」

「それは……難しい問題ですので、私には何とも……薬に頼る手もあると言いますが」

「兄やんも俺の話聞いてや!」
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