第36章 物々交換
竜胆は菫を連れ、部屋に戻る。
長持や押し入れの中、果ては屋根裏から大量の春画を取り出し、菫の前に広げた。
「桔梗に言うたらもっと出てくるけどな、とりあえずこんなもんでええやろ」
「わー……! ぼく初めて見ました……!」
「せやろなぁ。まあじっくり見たらええわ。好きなんあったら貸したるで」
菫は言われた通りに春画を手に取り、次々と目を通していく。
一人自分を慰める若い娘。
野外で絡み合う男女。
遊女遊びを楽しむ青年。
その他沢山の性的好奇心を掻き立てるような場面や状況が描かれている。
菫は難しい表情になる。
しかしながら、誇張された魔羅も鮮明に描写されたぼぼも、菫の性的好奇心を掻き立てるものでは無かった。
「どや。興奮してきた?」
「よく分かんない……です」
菫が素直に答えれば、
「そうか〜、まあこの良さは子供には分からへんかもしれんなあ」
竜胆はさして気にする様子もなく笑う。
なんとはなしに一枚手に取り、山賊に乙女が襲われている様に見入る。
「これとか俺のオススメなんやけどなあ……」
菫は不思議そうに竜胆を見つめ、視線を下げる。
「でも……竜胆お兄さんのも大きくなってないです」
竜胆は苦笑いした。
軽く肩を揺らし、春画を置く。