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影の花

第35章 サンドリヨン


蘭は大きく息を吐き、腕を組んだ。

「……分かったわ。つい遠慮しちゃう者同士、手を組みましょう」

「蘭さん……! 協力してくれるんですね!」

昼顔はぱあっと表情を明るくする。

蘭は深く頷き、天高く指さした。

「ええ。名付けて瑞ちゃん骨抜きにしちゃう大作戦〜!」

唖然とする昼顔の手を取る。

「大丈夫、勇気を持って。あの二人よりアタシたちの方が百倍いい女よ」

「ツッコミ不在ですから僕が言いますけど、誰も女じゃないです」

蘭と昼顔は腰を据えて話し合う。

「夕顔ちゃんも鈴蘭も、一見グイグイ行ってるようだけど、肝心なことは言えないヘタレよ。しかもかなりのバカ」

「……まあ、それはそうですが。ヘタレという点では僕も蘭さんも負けていない気が」

「だからそれを今から克服するんじゃないのよ!」

蘭は啖呵を切ると、先程まで昼顔が漁っていた箪笥を開く。

中からお香を取り出した。

「そんなアタシ達にはこれよ!」

「それは……お香? それをどうするんですか?」

「これはただのお香じゃないのよ、惚線香って言うの。これを焚くことで性的興奮が促進されるのよ。思いっきりいい雰囲気にして、ドキドキさせちゃいましょ」

「すごーい蘭さん」

「ふふん」

「蓮華さんみたいですね」

蘭は勢いよくずっこけた。
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