第35章 サンドリヨン
あっけらかんと言う蘭に、昼顔はむっと顔を顰める。
「……それは……蘭さんに言われたく、ありません」
「何よそれ、どういう意味?」
「だって……蘭さんも鈴蘭さんに遠慮して瑞さんに関われないでいるでしょう!?」
「えっ! 何よ……何言ってんのよ、昼顔ちゃん」
動揺を顕にする蘭を尻目に、昼顔はすくっと立ち上がる。
蘭の部屋の箪笥に手を掛けた。
「やっやだ、やめなさいよ! ちょっとお!」
昼顔は丁寧に折り畳まれた着物の下に隠された紙を取り出し、蘭に見せ付ける。
「これはなんなんですか! これは!」
それには優しくはにかむ瑞の顔が描かれていた。
「……これは、梅ちゃんの絵があんまりいい出来だったから譲ってもらっただけで」
「まだ出しましょうか!? どうせまだ何か持ってるんでしょう!?」
「きゃーッ! やめてよっ!」
家探ししようとする昼顔に蘭は悲鳴を上げ、何とか取り押さえた。
お互い息を切らしながら向かい合う。
「蘭さん……瑞さんを見る目が違いますもん……」
「ちょっと、嘘でしょ? やだ〜……」