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影の花

第35章 サンドリヨン


「蘭さん。僕、この可愛い姿で瑞さんと一緒に過ごしたいんです……」

瑞の名前に蘭はぴくっと反応し、目線を少しだけ逸らす。

「それをそのまんま瑞ちゃんに言ったらいいじゃないのよ……どうしてアタシに言う訳?」

「そのつもりでした、しかし、なかなか言い出せず、もうこのような時間に……」

昼顔は悔しそうに答える。

蘭は外に視線をやり、顔を引き攣らせる。

「お、奥手ねえアンタ……もう夜じゃないの」

ふーとため息を吐いた。

「なんでそんなに言えないのよ。別に告白する訳じゃなし、適当な理由付けて誘ったらいいじゃない。瑞ちゃんならそうそう断わることはないでしょう。むしろ喜んでくれるわよ」

蘭の言葉に昼顔は俯く。

「僕もそう思います。でも……夕顔兄さんが瑞さんのこと、好きなんじゃないかって。だから何となくはばかられて……」

「ああ……アレはバレバレよね」

「ですよねえ!?」

「でもどうしてそこまで遠慮する必要があんのよ。いくら兄貴だからって、そんなのおかしな話よ? よく言うでしょ、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえって。好きなようにしたらいいのよ」
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