第35章 サンドリヨン
「わ〜〜……」
瑞たちと別れた昼顔はフラフラと自分の部屋に戻り、押し入れから布団を取り出す。
枕を置き、ぼすっと倒れ込んだ。
顔を真っ赤にし、布団にうつ伏せになる。
枕を引き寄せ、両手でぎゅっと握りしめた。
「ドキドキするっ……」
瑞の声を思い返し、心臓をバクバクと跳ねさせる。
「鼓動がうるさいくらいだ……蘭さんや椿くんたちに可愛いと言われた時と、明らかに違うんだよなあ」
ゴロンゴロンと寝返りを打ち、仰向けになると天井を見上げながら吐息を漏らす。
「……お世辞なんだろうか。あの人はここに来てから素敵な人に見慣れてしまっただろうし、僕は凡庸だからなあ」
自嘲気味に零し、桜や藤を初めとした女装の似合う陰間たちを思う。
「でも、折角蘭さんに綺麗にしてもらったんだ。今日の僕は可愛い、はずだ」
昼顔は体を起こし、鏡を覗き込んだ。
「……やっぱり手伝ってください〜!」
そんな決意と裏腹に、昼顔は蘭の部屋に舞い戻っていた。
驚く蘭に半泣きで縋り付く。
「ちょっと昼顔ちゃん、どうしたのよ! 何があったか知らないけど、あんまり泣いたら化粧が落ちるわよ」
蘭に言われ、昼顔はぐすっと肩を上下に震わせる。