第35章 サンドリヨン
「若い癖に何言ってんのよ、あんた可愛い姿見せたい相手とか居ないの?」
「兄さんとか……」
「兄弟にじゃないわよ!」
昼顔は少し考え、一人の顔が浮かんだ。
「あ……」
ぼっと頬が火照った。
「その顔、いるのね?」
「えっ、あ……!」
昼顔は顔に出たことに気がついて慌てて首を振るも、蘭は嬉しそうに声を跳ねさせる。
「いいじゃな〜い! アタシ、昼顔ちゃんって可愛いのに全然浮いた話がないから心配してたのよお〜!」
「やっ、や……ッ」
「今から暇? 来なさい、お姉さんが綺麗にしてあげるわよ」
蘭は昼顔の手を取り、
「あぁ〜……」
ズルズルと引きずっていった。
蘭は昼顔を自室に連れ込み、化粧箱を取り出す。
髪飾り等の準備をしながら、固まっている昼顔に言う。
「昼顔ちゃん、当たり前だけどその服は着替えてらっしゃいね」
「はい……」
昼顔は弱々しく頷き、自分の部屋に戻る。
野良着を脱ぎ、一張羅に持ち替えた。
淡い桃色の振袖に着替え、恥ずかしそうに俯いて蘭の部屋に戻る。
蘭は目を輝かせた。