第34章 惚れた腫れた
「ということで薊さん、これからも仲良くしましょう? やっぱり避けられるのは嫌です」
「ったくしょうがねえな、わーったよ……仲良しこよしすりゃいいんだろ」
「良かったです! それではまたいつも通りに話しかけますねっ」
「勝手にしやがれ、物好きが」
薊は嬉しそうにする瑞を横目で見ながら、相変わらずの調子で毒を吐いた。
「……にしても。おっそろしい奴を好きになったもんだな、お前」
薊は牡丹とサシで会話しながら、瑞を思い出して眉根を寄せる。
「むしろ惚れ直した」
牡丹は薊の言葉に、無表情ながら瞳に嬉しそうな色を宿す。
薊は小さく頷き、涼しい表情で牡丹を見る。
牡丹は惚れ惚れとしたように呟く。
「惚れ薬が効いたのかもしれない。瑞をますます好きになっている気がする」
「そりゃ凄い惚れ薬だな。効き目抜群過ぎて、掛けられてねえ俺にまで薬が回ってきやがったぜ」
薊はそう言い残すと、腰をあげる。
「じゃあな。お前らと馬鹿やってるうちにヤニが切れちまった」
「ああ……」
牡丹は薊の言葉を反芻し、
「え……薊っ、今の……!」
急いで振り返るも薊の姿は影も形もなくなっていた。