第34章 惚れた腫れた
「瑞」
それから、牡丹は蓮華から受け取ったイモリの黒焼きを忍ばせ瑞の部屋を訪れていた。
「はい……って、牡丹さん。どうしましたか?」
「瑞は薊に好かれたいのか」
牡丹の質問に瑞はきょとんとし、
「んー……好かれたいと言えば、そうですね」
笑い混じりに頷いた。
瞬間、牡丹に頭から黒い粉をぶっかけられた。
「わー! なっ、なんですか!?」
瑞は飛び上がって目を丸くし、牡丹を見上げる。
「あ……あとはこれを、粉にして薊に振りかけてくれ」
牡丹は瑞目の前にもう一匹のイモリの黒焼きを突き出す。
「うわああ! どういうことですか!? 牡丹さん、さっきからなんなんですかっ!?」
「そうすれば、薊は瑞を好きになる……」
「へ?」
「俺には出来ない……」
牡丹は伏し目がちに言う。
瑞は不思議そうに牡丹を見、
「よく分かりませんが……とりあえず、中に入りませんか」
部屋の中に招いた。