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影の花

第33章 闇鍋


「手伝いましょうか?」

「ありがとう〜」

二人がかりで混ぜるうちに、液体にしっかりとした粘りがつき、大量の粘液が出来上がる。

「……これで完成ですか?」

「そうだよ〜。いちぶのりの完成で〜す!」

瑞は完成形を見ても何に使う物か分からず、名前を聞いても全くピンと来ない。

「ほんとはこれから紙に塗って乾かすんだけど、このままでも使えるよー」

その説明を聞いて、瑞はますます首を捻る。

紫陽花は新鮮な反応に妙な気を起こす。

瑞の手を取り、上目遣いに囁いた。

「そんなに気になるなら、ぼくと使ってみる……?」

瑞はヌメヌメの液体とやけに蠱惑的な表情を浮かべる紫陽花に、動物的な本能で危険を察する。

「いえ……結構で」

紫陽花は一瞬で真顔になり、

「うぐぅ!?」

瑞の首筋に手刀を叩き込んだ。

大きくよろめき、崩れ落ちる瑞を受け止める。

「きゃ〜大変〜っ、介抱しなきゃ〜」

ぴょんぴょんと跳ね、

「よいしょっと!」

柔らかい肉の下にしっかりと筋肉の付いた体で瑞を背負う。

その上軽々と大鍋を持ち、上機嫌に歩いて行った。

「あ……あわわゎわ……」

その光景を裏で見ていた菖蒲はひっそりと腰を抜かした。
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