第33章 闇鍋
木べらに絡みついた不気味な粘液。
瑞はごくりと唾を飲み込む。
「はいあ〜ん」
紫陽花とそれを何度も見比べ、
「ぁ……あーん……」
決死の表情で口を開いた。
口を閉じようとした瞬間、ヘラがスっと下げられる。
瑞がぽかんとして紫陽花を見ると、
「えへ〜っ」
にこーっと目を弛めていた。
紫陽花は笑って瑞の背中をぺしぺしと叩く。
「瑞ちゃん冗談だよお、どう見ても食べ物じゃないでしょ〜っ」
「は、ははっ……」
紫陽花が普段作っている料理との見分けがつかなかった瑞は曖昧に笑う。
「で、ではそれはなんですか?」
「これはねー、ふのりって言うの〜」
紫陽花はよいしょと大鍋を抱え、中身をザルに取る。
ザルで綺麗に濾し終わると、卵を割る。
「黄身は使わないの〜」
白身と黄身を分け、菜箸を使って白身を掻き混ぜる。
よく混ざり、液状になったところで用意しておいた葛粉を投入した。
それを更にかき混ぜ、先程大鍋で煮ていた煮汁が程よく冷えたところでふたつを合わせ、また混ぜる。