第4章 狐の婿入り
夕顔は彼を見て、ひょいひょいと手招きする。
「おー、梅。コイツのせいで大変だったんだぞ」
「そのようですね……何があったんですか?」
「新入りの部屋に忍び込んで、寝顔見てたんだと。そんでコイツが目覚ましちまって、もう大騒ぎよ」
梅の顔がぐっと曇る。
瑞の方を見据え、深々と頭を下げた。
「菊を寝起きに見て驚くのは無理もないです……すみません……しかも初対面の方に……」
「いや今見てもビビるもん。夜中便所行くコイツ見てひっくり返りそうになったもんね、オレ。廊下をバケモンが歩いてるって思って」
「化け物じゃなくてお稲荷さんだヨ、コン」
「いやコンじゃなくて」
夕顔がため息をつき、ボリボリと自分の頭を掻く。
「……ちょうどいいや、コイツが菊で」
「さっきはごめんネ」
菊が両手で狐の形を作り、顔の横にやる。
こてんと首を傾げた。
「コイツが梅」
「菊、ほんとに謝る気はあるんですか……? 自分からも謝ります、申し訳ありません……梅です、何卒よろしくお願いします……」