第31章 一難去ってまた一難
「躑躅にいって、すっごく前から陰間として働いてたんだよねえ」
「ええ。何の自慢にもなりませんが……椿さんの歳の頃にはもう客を取っていましたね」
「ってことは、裸見られるのも慣れっこなんだよね? それ以上のこともするんでしょ? 躑躅にい、その時も恥ずかしくなるの?」
椿に質問を重ねられ、躑躅は少し思案してから答えた。
「まさか。椿さんも働き始めたら分かると思いますが、あくまで陰間は仕事です。お客に対してあたかもときめいているような演技をすることはありますが、本当に心動くようなことはありません。裸を見せることも嫌な思いをするのも当たり前です、いちいち狼狽えたりはしません」
つらつらと吐き出される言葉に、椿を首を傾げる。
「……それなのにその人に対しては恥ずかしくなっちゃったの? なんだか変じゃない?」
椿の疑問に、躑躅の白い肌に赤色が差し、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。
「え……そっそれは、椿さんだって、いきなり帯を解かれたり、身体を触られたり、し、下着を見られたり……! たとえどんな相手であっても不愉快に感じるでしょう!」
「う、うん」
「ですからこれは仕事とは全く別の話です! 性を売り物にしていると言っても、仕事以外の場でも助平だと思われるのは心外でしょう!? 椿さんに、そういう馬鹿のような発言はして欲しくありません!」
言いながら首筋まで赤く染め上がる躑躅。
椿はコクコクと頷いて躑躅を宥める。
躑躅は何とか気を落ち着け、額に手をやった。