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影の花

第30章 残酷


夜顔はそんな夕顔を嘲笑うように薄く唇を歪める。

「振り向いて貰えない自分が惨めで、身体だけでも繋がっていたくて、拒否されてどうしていいか分からなくなったんだろ?」

夕顔は肩を小刻みに震わせ、すすり泣きを洩らした。

「う……っうぅ……」

「夕は昔からそうやってすぐに泣くね。泣いたからって許してあげるのはお兄ちゃんだけだ」

「ごめ……ごめん、夜顔お兄ちゃん……っ」

「だから、僕に謝ってどうするんだい」

夜顔は夕顔の顔を平手で打った。

部屋に響く音と光景に、瑞は目を覆いたくなる。

「いッ! う、あ……」

夕顔はたじろぎ、ボロボロと涙を零す。

「夕、泣くだけじゃダメだって今言ったばかりだろ? 貴方は自分が酷いことをしたのに、自分がされるのは嫌なんて虫が良すぎるね」

「ごめんなさい……っ、オレ、オレ……」

再度乾いた音が鳴る。

「それに、貴方は陰間として他の人を抱いているだろう? 瑞さんが他の人と仲良くするのは許せないなんて、そうは問屋が卸さないよ。本当に、小さな頃からまるで変わっていないね……泣き虫でわがままな子供のままだ」

瑞は耐えきれなくなり、夜顔の前に躍り出る。

両手を広げ、夕顔を庇った。

「よ、夜顔さん……! 私はもういいですからっ! やめてください……」
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