第30章 残酷
瑞が納得すると、夜顔はまた表情をきりりと切り替えて夕顔を見る。
「夕。何か言うことがあるんじゃないかい?」
「ァ……ごめん、夜顔兄さん……」
「謝る相手が違うだろう?」
夕顔は瑞に顔を向け、頭を下げる。
「瑞……オレが、悪かった……ごめ、ん……」
「い、いえ私は……大丈夫、ですよ夕顔さん……でも、何故そんなに夕顔さんが怒ったか分からなくて……」
瑞は優しく首を振るも、言い難そうに声を落として呟いた。
瑞の呟きに、夜顔は含み笑いをする。
「ふふ。だってさ、夕」
夜顔に意味深な視線を送られ、夕顔は瞠目する。
「やだっ、夜顔兄さん……! 言わないで……ッ」
夕顔は形相を変えて引き止めるも、夜顔は微笑して言う。
「夕は貴方のことが好きなのさ」
「うぅッ……」
夕顔の肩が震える。
瑞は驚いた顔で二人を見る。
「ほ、ほんとですか?」
「まあ、夕が言えないのも無理はないよね。今の貴方には全くその気はないもんね」
「それは……」
瑞は夕顔の視線から顔を背ける。
夕顔の目に絶望の色がうつろう。